Pathee engineering blog

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VPS(Visual Positioning System)の可能性を語るの巻

どうも、Patheeの寺田です。

 GPS(Global Positioning system)は、車のナビゲーション用から広く一般に普及してから、今ではスマートフォンに搭載され、日常のナビゲーションにも使われるようになっている。今では、衛星だけでなく、地上施設等を利用した通信(Assisted-GPSやDifferential-GPS)によりメートル単位で測位誤差を補正しており、(ちなみに、日本で最初に発売されたiPhoneには、A-GPSが搭載されており、何これ?って調べて知った記憶がある。)高層ビル間や、天気などの環境にも左右されなくなってきている。しかしながら、建物内や地下や、外部から遮断された場所における位置測位は、GPSでは限界がある。

 これまで、建物内などのGPS信号を受信できない場所における位置測位は、屋内測位という分類で様々な手法が提案されている。例えば、誤差は大きいが、Wi-Fiなどの電波を利用して測位をする手法や、設備の敷設コストが高コストだが、予め緯度経度、高度などの情報をプリセットした機器から、GPSと同じ信号を発信することで、既存の端末でもGPS信号を受信して測位する手法などがある。

 現在、一昔のPC並のスペックをもちカメラ付きのスマートフォンの登場により、もう一つの屋内測位の手法の実用化が現実味を帯びてきている、それがVPS(Visual Positioning System)である。VPSによって、図1に示すように、屋内においても高精度に位置を測定することが可能となっている。これは、予め保存された3次元空間におけるオブジェクトの特徴を表す点の集合(Point Cloud)と、カメラ越しに計算されたPoint Cloudの情報のマッチングにより位置を測定している(はず)。古くは2006年頃からVPSによる位置測位の手法は提案され始めており、初期には、GPS信号の届かない、地下などの駐車場などの利用を想定し、車載カメラを使った例や、ロボットなどの歩行ナビゲーションなどを目的に様々な手法が提案されていたりする。


図1.Google 'Visual Positioning Service' AR Tracking an Action


 実用面において、一番有名であろうVPSを利用して実用化されているスマートフォンアプリは、Google Mapsのナビゲーションだと思われる。Googleは、ストリートビューなどの情報から予め屋外の建物などの情報を既にもっているはずなので、その情報とPoint Cloudとマッチングすることで実現していると思われる。図2に示す、Google Mapsのナビゲーション機能を使う際に、カメラを「建物や看板にカーソルを合わせて下さい。」と表示されるのは、まさに、カメラ越しに屋外のPoint Cloudを取得しているからだと考えられる。

Google Mapsのライブビュー
図2.Google Mapsのライブビュー


 筆者が、VPSに可能性を感じるのは、単なる位置測位としての手法ではなく、ようやく電脳コイル(図3)や、SAO(Sword Art Onlineオーディナル・スケールといったARの世界が実現可能であることにである。これは、単なる屋内測位にとどまるだけでなく、図4に示すように、単なる空間と情報を紐付けるというより、建物などの物理的なオブジェクトと情報を紐付けることが可能である。

https://livedoor.blogimg.jp/kurosawa503/imgs/3/4/348eaa93.jpg
図3.電脳コイルAR(拡張現実)始まったな。または日本終了のお知らせ。 : ネムリーのつやつやビジョン (100% Kawaii Blog)SAOオーディナル・スケールのオーグマー
図4.SAOオーディナル・スケールのオーグマー越しに見た世界


 将来の展望として、この要素技術は、5Gやスマートグラスの様なデバイスなど出現によって、日常生活における利用が多くなっていくと考えている。特に、これまでオンライン化されていなかった、小売店舗での利用は、容易に想像できる。実際に、ショッピングに関して、店舗での買い物などが、店内の単なるナビゲーションだけでなく、すでにイギリスのスタートアップであるBlippar(https://www.blippar.com/)は、S.C.(ショッピングセンター)において、オブジェクトに広告を紐付けた表示まで実現しているようである。(参考: https://www.moguravr.com/blippar-visual-positioning-system-ar/

 次回があれば、VPSに関連する要素技術、ビジネス的なインパクトについて、検討しまとめる予定である。

♪メリークリスマス♪